奇跡という存在は、毒の姿をしているのかもしれない。
相当久しぶりに映画を観てきた。(ジ、エクストリーム、スキヤキ以来かなぁ)いつも行ってる映画館では上映されない映画だったから、自宅(滋賀)から梅田(大阪)まで見に行った。大阪は苦手。(神戸は好き)
今回鑑賞した作品は〈 シェル・コレクター 〉。
監督は坪田義史さん。主演はリリー・フランキーさん。このお二方、なんと15年ぶりのタッグ?らしい。そういうの、なんか好き。もともと僕はリリーさんが好きで、ただそれだけの理由で普段は重い腰を軽々あげました。それで。
わかってた、わかりきってたことだけど。僕の好きなタイプの作品だった。観に来てた人の約9割が40代以上(目測)だったことにも、「ああ、そうですよね」って思った。
この映画でリリーさんが演じるのは【盲目の貝類学者】。この設定だけでもう、期待感しかありませんよね。さらにさらに、共演者は寺島しのぶさん、橋本愛さん、池松壮亮さんなどなど実力派ぞろい。
さて。
ここから感想的な、コラム的な、詩的な文章を書いていきますけど。作品の概要についてはオフィシャルホームページを見てもらった方がいいと思います。(ほぼコピペになるので)
それから批評っぽい文章は、専門家さんたちがそのうち書いてくれると思いますので、ボクはいつも通り書いていきます。いつも通り、作品に触れた瞬間(鑑賞中〜鑑賞後)の「はわぁ..」ってかんじの感動に反射神経だけを使って書いていきますね。
以下、詩評。
奇跡という存在は、毒の姿をしているのかもしれない。
[イモガイ]
まず刺された手から恐ろしい程に冷たくなり、次は腕、肩、そして頭部から胸部に急速に麻痺は広がり、やがて何も飲み込めなくなるほど全身が衰弱していき、ついには呼吸ができなくなり、煙草で一服している間に死に至る。
盲目は盲人を守る。
無知は馬鹿を守る。
罪は、罪人を守る。
人間は、未だに海の中にいるのかもしれない。だから、ほんの少しの傷口ができた時、そこから流れ出た僅かな血液が、予想のできない範囲までを『赤く染めて』ただ君は、底にいることしかできなくなるのだろう。
貝が美味しいと言われている理由は、海に沈んだ人間の死体を食べているからなんだよ。
閉じた世界に思えるのは、
孤独を厭に思うのは、
君がまだ若いからさ。
何もしらない と
何もいわない を
交互に繰り返す波打際。
白と赤のコントラスト。
生きたいって言うの、気持ち悪いね。でもキレイな標本をつくるには、君が生きていないとダメなんだって。茹でてから、中身を抜き取るんだよ。
白い純粋と赤い純粋が交わればどうなるか。わかるよね。純粋な色というものはこの世界にはなくて、それは全ての生命に当てはまる真理なんだ。それ以上は、もう何も言う必要がないから、またいつか君は新種になって、僕に名前を付けられるのを待っている貝。
詩評、以上。
抽象的な問いに対して、答えを自分で決められる人にお勧めの映画です。
貝の美しい螺旋のように観賞後も自分の中に作品の血や毒が続いていきます。
絶対に金曜ロードショーでは放送されない(であろう)奇作。
全役者さんの怪演の毒に痺れる感覚を、是非、味わってほしいです。